構造設計とは
構造設計とは、柱や梁、壁、金物、基礎など構造的な要素を検討し、建物の安全性を確認して設計
を行うことです。また、建物の自重や積雪荷重、地震や台風などについて建物の規模、用途、構造
体の種類に応じて、デザイン面やコスト面も含めた適切な設計を行う必要があります。構造設計の
中で緻密な構造計算を行うことで、建物条件に応じて安全性を確認することも重要です。
建築設計では大別すると構造設計以外に、間取りや外観・内観などデザイン面の検討を行う意匠設
計、電気設備や水道・空調などの配管関係を検討する設備設計があります。建築は、各設計部門と
連携して建物の様々な整合性を確認することで計画されます。
木造建築物の構造設計
木造建築物の場合、構造設計の一部分として仕様規定に基づき以下のいずれかの基準で構造計画が
進められます。
・壁量計算、壁の配置バランス、N値計算など簡易的な計算を行い安全性を確認
・許容応力度計算などによる緻密な構造計算にて安全性を確認
4号建築物に該当する建物の場合、確認申請時に構造審査を省略することが可能となります(4号
特例)。木造2階建ての一般住宅の大半がこの4号建築物に該当するため、ほとんどの場合で確認
審査機関では構造的なチェックは行われません。つまり4号特例となる場合は、建物の安全性の確
認方法は担当する建築士の判断に委ねられることとなります。この状況から、これまで保存義務が
なかった4号建築物での壁量計算書などの構造図書ついて、2020年3月1日からは建築士事務
所に15年間の保存を義務付けられました。
※2025年4月からは、木造建築物を建築する場合の建築確認手続きが見直し(いわゆる4号特
例の縮小)が予定されています。
→4号特例の縮小と構造計算
安全な木造建築物のための構造計算
前述の通り、4号建築物でも壁量計算書などの保存が義務化されたとはいえ、確認申請の際には構
造的なチェックが行われないため、本当に安心できる建物とする場合は構造計算を行うことが重要
となります。構造計算を行うことで、壁量計算では検討できない詳細な検討が可能です。構造計算
では建物ごとで異なる各箇所にかかる荷重や地震・風の力に耐えられるか、大きな吹抜けがある場
合の安全性の確認などが緻密に検討されます。
もちろん壁量計算を行った建物が安全ではないということではありませんが、検討内容に差がある
ため、右にある表のように、壁量計算で確認した建物でも構造計算を掛け直してみると壁量が不足
しているということもあり得ます。必要壁量、存在壁量ともに示す壁量が異なっていますが、以下
のような理由が考えられます。
◎必要壁量の違い
・地震力・風圧力に必要な壁量について、許容応力度計算では詳細な荷重条件も加味しているが、
壁量計算では定数でしか検討されていないため
・許容応力度計算では吹抜け、スキップフロアなどの検討(地震力が伝達されているかなど)が行
われ耐力壁が必要な位置が算出されるが、壁量計算では検討されないため
・建物階高により必要な壁量が増減するため許容応力度計算では詳細検討されますが、壁量計算で
は詳細検討されないため
◎存在壁量の違い
・スキップフロアや吹抜けがある際に、壁量計算では水平構面の検討が行われず、地震力が伝達さ
れない位置に配置された耐力壁も壁量として算出されているため
・丘立ち柱となる梁上に耐力壁が配置される際に、許容応力度計算では梁のたわみによる倍率の低
減を検討するが、壁量計算では検討を行わないため
上記の通り、壁量計算だけでは本当に安全な建物だと判断することは難しい場合があります。構造
計算を行うことで建主への安心の裏付けとなるため、設計者としてもより良いご提案が可能となり
ます。
また、ストローグを使用して構造計算を行うことで、在来工法や一般的な金物工法とは異なり、柱
や壁に制約されない大開口や大空間など意匠面の自由度にも対応しつつ、構造的に建物の安全性を
確認することができます。
→ストローグを使用した構造設計の事例